デンマークの動物園での出来事

 デンマークのコペンハーゲンの動物園で,
キリンが殺処分されたとの新聞記事があった。→ こちら


 デンマークには2003年に,半年ほど留学していた。
この動物園にも2回ほど行ったこともあるので思い入れもあるし,
キリンが殺処分とは穏やかでない,と思って読んでみたら,
飼育しているキリンの近親交配を避けるために,1歳半の雄のキリン
(マリウス)を殺処分して,ライオンの餌にしたらしい。

 当然ながら,動物愛護団体からの相当の反対があったり,
ネット上で助命を求めて署名運動が行われたり,
英国の動物園からは引き取りの申し入れがあったり,
といろいろあったようなのだが,
結局,引き取りも実現せず,殺処分されたそうだ。
職員には,殺害の脅迫まで来ているらしい。




 殺処分は可哀想だと思うし(特に,新聞記事には可愛い写真まで載っている!),
何とかならなかったのかという気もするが,その善し悪しを言うような立場にはない。

ただ,記事の中の
「動物の体の仕組みを学んでもらうため、死体は子どもを含む大勢の来園客の前で
 解体された。一部は研究に使われるという。」
という一文を読んで,いかにもデンマークらしいと思った。


 昔,僕がその動物園に行った時も,週末の子供向けのイベントとして,
ニワトリを解剖して見せていた。

 幼稚園児だったうちの娘もそれを見ていて「ちょっと可哀想だけどね。」と
神妙な顔つきをしながら,ニワトリの内蔵を,興味津々で見つめていた。
回りにも同じくらいの年の子供達が沢山いて,何を思って何を言っていたかは,
分からなかったけれども,みな真剣に見たり,触ったりしていた。
それを見ながら,文化の違いとは言え,日本ではこういうことはなかなか
出来ないだろうなと思った。


 今回の一件も,同じことが日本で起きたら,子供に見せるのは残酷だ,
と言う話になって,子供達の前で解剖するようなことはないだろう。
殺処分をするなら,こっそりと人目に付かない所で行いそうだ
(別に隠すという意味ではなく)。

でも,殺処分がやむを得ないと言うことなのだったら,
それを表に出さないというのが良いのかどうか,は難しい。


 殺処分したキリンの解剖を子供にも見せると言う行為からは
「殺処分せざるを得ないのなら,キリンの解剖を見ると言う貴重な機会を,
子供も含めて多くの人に見てもらいたい。」という,デンマークの,
いかにも合理的な,あるいは,ある意味,科学的なスタンスを感じる。

 ただ,それよりも強く感じたのは,良いことも悪いことも,
小さな子供に対しても包み隠さず見せる,というスタンスだ。
「実は世の中,そんなにきれい事だけでは済まないことも多いんだよ」と。


 勝手な想像だが,動物園という存在自体も,動物を保護するという環境保護・
環境教育施設という一面がある一方で,それ自身が動物を自然から隔離して
野生を失わせているという,矛盾する一面を持っていると言うことを,
このキリンの殺処分を通して,動物園は投げかけたかったのかもしれない。


 殺処分に携わったスタッフも,心の中では泣きながら,でも淡々と,
子供達に向けて,マリウスを解剖して見せていたのではないかと思った。




226-den_zoo01.jpg
コペンハーゲン動物園(2003年5月頃)
古い写真を引っ張り出したのだが,なぜかごみ箱の写真がない……。
昼食時に撮った写真の後ろに,かろうじてごみ箱が写っていました。
机上の飲み物「マチルダ」はデンマークでは有名です。




226-den_zoo02.jpg
トイレの写真が1枚ありました。
重厚で,デンマークらしい感じがします。




226-den_zoo03.jpg
帰りに駅のホームから撮った線路の様子。
ごみがたくさん散らかっています。
デンマークでよく見掛ける風景でした。

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水谷聡

Author:水谷聡
@大阪市立大学 工学部 都市学科

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