トイレのハエと数値目標
北京で,公衆便所の衛生状態をきちんと管理するために,
「観光地や駅、空港、公園、病院などのトイレ内のハエは2匹まで。」
という管理目標基準を作ったと新聞記事で見掛けた。
記事では,いずれも「どうやってハエの数を数えるのか」などと,批判が出ていることを報じているが,ま,確かに厳密に実施する際には,多くの問題が生じるだろうけれども,目標を数値で設定すること自体は悪くない。
大学も最近は厳しくなって,学生からも評価される(授業に対するアンケートなどが多い)し,業績評価も頻繁に行われている。自分でも目標を設定して,年度末に達成できたかどうかをチェックするのだけれども,達成できたか,達成できなかったか,がはっきりと見えるから,数値目標は怖い。
研究活動が活発かどうかは,論文の発表本数や,学会での発表回数などの数字で目標設定する,と言うことになる。数値目標の悪いところは,「達成できそうな,低めの目標をついつい設定したくなる」というのは,レベルの低い問題で,本質的には質を評価できない点だ。
ひとくちに,「論文の本数」と言うけれども,学問分野によって論文の書きやすい分野と書きにくい分野があるし,論文の質も様々だから,単純に本数だけで評価できるものではない。
で,質を評価するために,その目標設定自体が妥当なのかどうかの評価が必要だ……となって,外部の専門家に評価してもらう,ということになる。さらに,いやしかし,その外部の評価者は妥当なの?というようなことになると,もう外部評価の無限地獄になってしまって,評価する人にも負担が掛かるし,評価される方も評価してもらうための資料作りに追われたりして,労力と時間を膨大に取られる,ということになる。最悪である。
論文の本数については,「質」も何とか数字で表してしまおう,という方法がある。同じ論文1本でも,学術雑誌(journalといって,magazineではない。)によってレベルが異なるから,A誌に載った1本は,B誌に載った3本に匹敵する,といった具合に換算する。この換算係数は,インパクトファクターと言って,公表されている(この係数が与えられていない雑誌も沢山ある)。もちろん,その係数が妥当かどうかは,いろいろ判断が分かれるのだけれども……。
学生からの評判については,僕が担当している「都市資源リサイクル工学」と言う講義では,毎回さいごに小テストを実施しており,その際に,”今日の満足度”を5点満点で記入してもらうようにしている。
記名式の上に,僕自身が採点するのだから,悪い評価は付けにくそうで毎回3~5点しか記入されていないという問題点はあるものの,授業の内容に応じて微妙に点数には変化があって面白い。工学部の学生相手なのに法律の話ばかりした時とか,自分の専門テーマに近いからと言って,頑張って難しい話を入れすぎたりすると,評価が下がったりして,やはりきちんと見られているなあと感じる。今年は今のところ,4.14,4.39,4.32,4.59,4.50,4.60,4.45という結果だが,毎回,なんとか4.5点は確保したいものだ。
先日の国際会議が開かれた,チャルマース工科大学のトイレ。
男性用便器ですが,黒い点は汚れではありません。
ハエが印刷されています。
すこし汚い話ですが,オランダの空港(だったかな)で,ハエを印刷した便器に変えたら,利用者が皆,このハエを狙うようになって,便器のあちこちが汚れることが少なくなり,掃除代が劇的に減ったのだそうです。男性諸氏なら,この心理は,きっと分かりますよね~。