「警戒区域」のちぐはぐさ

 福島原発から20km圏内が一律に「警戒区域」に指定された。”一律に”と言っても,どこを中心として線を引いているのかが分からないから,一律なのかどうかもよく分からない。何ともいい加減な線引きである。

 

 しかしその線引きの為に,自宅に住みたくても強制的に,しかも突然,家を追い出されることになって,戸惑っている人たちがいるらしい。

毎日新聞 「福島第1原発:突然「出ろ」と言われても 20キロ圏封鎖」。

 

 一方,「警戒区域」の指定と時を前後して,20km圏内でも汚染の度合いはかなり違い,圏内でも汚染度の非常に低い土地があると言うことも公表されている。

朝日新聞「20キロ圏、汚染に濃淡 文科省、128地点の線量公表」。

 

 原発の「想定外の」事故が起こった直後の混乱状態ならいざ知らず,事故から1ヶ月以上も経った今頃になってこんなちぐはぐな政策が出てくるというのは,一体どういうことなのだろう。

 与えられた正しい情報を元に自己の責任で住み続ける選択をしている人たちを無理矢理に移住させるのは何の為なのか。追い立てられる人はたまらないだろう。

 

 たまらないと言えば,がれきの処理を引き受けると行った川崎市に対して,市民から苦情が殺到しているというニュースも嫌な気分になった。

産経ニュース「福島ごみ処理支援で川崎市に苦情2000件超」。

 

 受け入れるのは,放射性廃棄物ではない普通の廃棄物である,と市役所が力説していると言うことだが,そういう問題でもないだろう。

 

 もちろん,放射性廃棄物も運搬して首都圏で処理するべきだ,などと言うつもりは毛頭ないが,日頃,原発のリスクを地方に押しつけて電気を利用しておきながら,何かあってもリスクは一切受け付けないというのは,あまりに無責任で心ない発言ではないだろうか。

 

"The Philadelphia Inquirer"というフィラデルフィアの新聞にあった漫画

(2011年3月27日,Tony Auth作)。

"Fallback position"とは,「代替案」とか「頼みの綱」といった意味のようです。

著作権上,まずいでしょうか……。

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水谷聡

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