ミルクボーイにあやかって
昨年末にやり残して(あちこちに迷惑を掛けていた)仕事に冬休みからずっと追われて
まったく余裕がないままに1月が終わってしまった。
このブログも新年の挨拶もしないままに2月になってしまうが,今年もよろしくお願いします。
さて昨年度は誰もが大変な一年を過ごしたと思うが,大学教員の私も非常に慌ただしかった。
遠隔授業でキャンパスライフの権利を奪っている……などと叩かれることも多かった大学だが,
個人的には,とにかく遠隔授業の準備に追われて,何もしないままに1年が終わってしまった,
という印象だった。
私は主に,パワーポイント(スライド)を作って声を吹きこみ,動画にして受講してもらう,
というスタイルの授業を中心に進めたのだが,とにかく1週間が早くて,
毎回の小テストの採点~授業用スライドの作成~動画作成とアップロードに,
常に追い立てられていた。
授業そのものは何年もやっているので,教材はそれなりにあるのだけれど,
対面でする場合と,遠隔授業とは勝手が全く違う。
対面なら学生の様子を見ていて,分かっていなさそうなら補足したり,説明を繰り返したり,
ということができるが,対面授業だと動画教材を渡して各自に受講してもらうという
一方方向になってしまうから,とにかくつまずくところがないようにスライド内容を
見直したり,新しい情報を追加したり……と,とにかく授業教材づくりに時間を取られた。
久しぶりに授業を見直す良い機会にもなったのだが。
もちろん,遠隔授業で良かったこともある。
それは学生がPCの前に座っていて,インターネットに繋がる環境にあるわけだから,
ネット上のさまざまな情報を活用できるという点で,授業の幅が広がった。
私の専門分野に一番近い授業は,「都市資源リサイクル工学」といって,
ごみ処理とリサイクルについて説明するものであるが,
ごみを焼却する様子とか,リサイクル施設の設備などは,文字や言葉では伝えづらい。
これまでは自分が撮ってきた写真や動画を見せたりしていたのだが,
YouTubeには多くの動画が公開されており,活用させてもらった。
学生にも毎回アンケート(感想)を書いてもらっていたが,非常に好評だった。
もう一つ,遠隔授業の教材を作る上で力を入れたのが,
ごみに興味を持ってもらえるような教材を授業の間に挟むことだ。
私の研究室に配属されて,ごみのことを専門に勉強する学生はともかく,
学科全体で見れば,ごみに関する講義はこれが最後,という学生の方が遙かに多く,
そんな学生には,とにかくごみに興味を持ってもらうことが大事だと思っている。
ごみやごみ箱に少しでも興味を持ってもらうことができれば,
授業の目的の半分ぐらいは達したようなものだ。
このブログで紹介しているようなごみ箱の写真は,これまでも1枚ずつ
「今日のごみ箱」として紹介していたのだが,
今年は,それ以外に,
私の恩師の高月紘先生の風刺漫画(ゴミック)も毎回使わせていただいたし,
YouTubeの動画で言えば,もったいないおばけ とか, AKB48の3Rのような,
AC(公共広告機構)のネタは使わせてもらった。
ご存知の方も多いと思うが,これらも好評だった。
これまでの教室の授業では,授業中のスマホ利用は禁止,などと言っていたが,
遠隔授業の準備を通じて,インターネットを活用した授業の可能性を考えるようになったのは
間違いなくコロナのお陰だ。
さて,そんな話の延長で,学生に興味を持ってもらうべく,作ってみた。
『プラスチックのサーマルリサイクル』 (注)は外部サイトにリンクしています。
●はい,ありがとうございます。ただいま,グリューネプンクトの付いたお菓子の空き箱を頂きました。こんなん,いくらあっても良いですからねえ。(注)
■最近な,おかんが市民講習会に行ってきてな,なんやごみ問題について勉強してきたみたいやねん。
●ほ~,それはえらいやないの。
■それでな,プラスチックの有効利用について習ったんだけど,その名前を忘れたって言うねんな。
●はあ,それやったら一緒に考えてあげようじゃないの,どんなこと言うてた?ちょっと言うてみてよ~。
■うん,おかんが言うにはな,なんやカタカナやったらしいねん。
●それは,リサイクルと違うか?ごみ問題と言えばリサイクルやから。リサイクルに決まりよ,そんなもん。
■なんでもな,プラスチックごみから,エネルギーが回収できるらしいねんな。
●そやから,リサイクルやないか。リサイクルは,ごみを減らして資源として有効利用する,一粒で二度おいしい「アーモンドグリコ」みたいな技術なんやから。(注)
■俺もリサイクルやと思ったんやけどな,分別しなくてもいい,って言うねんな。
●ほなリサイクルと違うか~。リサイクルの第一歩は分別すること,「分ければ資源,混ぜればごみ」っていう有名なコピーがあるほどなんやから。分別せずにリサイクルしようなんて,そんな甘い話がある訳ないよ。ほかに,どんなこと言うてた?(注)
■うん,英語で言うとな,なんだかRで始まるらしいねん。
●やっぱり,リサイクルやないか。立派にRで始まるし,だいたい再生紙の使用マークなんか,どう見てもRの恰好してるんやから。(注)
■しかしRの言葉をたくさん聞いて,ちょっと耳慣れない言葉だったらしいんやな。
●そやったらリサイクルとは違うか……。Rもいろいろあるもんね。3つや4つやったらともかく,最近は18Rとか,ゴルフかと思うぐらい増殖しているからね。(注)
■ただな,いろんなRの中では有名で,とても有効な方法らしいねん。
●そやから,やっぱりリサイクルやないか。何と言ったって,リデュース・リユース・リサイクルは,地球を救ってしまうんやから。(注)
■うん,俺もリサイクルやと思ったんやけどな,どうも専門家でないと出来ひんらしいねん。
●ほなリサイクルと違うやないか!リサイクルの第一歩は分別やけど,分別なんか,その気になったら小学生でも簡単にできるんやから。
■それからな,おかんが言うには,良いことのはずなのに,市民団体なんかからは,良くないって言われることもあるらしいんやな。
●やっぱり,リサイクルやないか。最近は3Rから2Rへ,って,何だか急に悪者にされている雰囲気すら感じられるんやから。他のRが悪く言われているのは,聞いたことがないもんね。
■いや,俺もリサイクルやと思ったんやけど,そのプラスチックは1回処理してしまったら,もう使えないらしいねん。
●ほんなら,リサイクル違うやないか。何度もぐるぐる回せるから,サイクルって付いてるんやから。
■でもな,ポイ捨てされて海を汚したりしているプラスチックを回収して,熱はしっかり利用できるらしいねん。
●そやからリサイクルやないか。マイクロプラスチックなんて,放っておいたら海で魚より多くなるなんて言われているのに,それを利用できるんやから。(注)
■ところがな,よく聞いてみると,焼却炉でプラスチックを燃やしてしまうらしいねん。
●ほなリサイクルと違うやないか!焼却炉なんて「燃やしてしまえ,プラスチック」って,信長のためにあるような施設なんやから。
■そやけど,講習会ではな,サーマルリサイクルと言われていたらしいねん。
●だったら,やっぱりリサイクルやないか。サーマルって言うたら熱って意味なんやから,それが上に付いていて,リサイクルに向けた熱量が伝わってくるようやないの。
■ところがな,ヨーロッパなんかではな,リサイクルとしては認められていないらしいねん。
●そんなら,リサイクル違うやないか!そこまではっきりと認められていないんやったら,リサイクル違うやろ。
■うん,リサイクルではなくて,サーマルリカバリーって言うらしいわ。(注)
●リサイクルではないんやないか,もうええわ。
実は,これは結局,まだ授業では紹介していないので,初公開である。
感想や,改善案など,ぜひお知らせ下さい。
ところで,この中で,自分で一番気に入っているのは,実は,最初の
「ただいま,グリューネプンクトの付いたお菓子の空き箱を頂きました。」
という所。これだけは,本物のミルクボーイさんにも使ってもらえるのでは……
と思っているのだが,甘いかな。

チョコパイみたいなデンマークで買ったお菓子。

裏返すと,この通り。グリューネプンクトがあります。

チョコレートが貼り付けられていたカエルの台紙。

裏にはやっぱりありました。

どこで買ったか忘れましたが,チョコレートの包み紙。
こんなん,なんぼあってもいいですからねぇ,と捨てずに取っておくので,研究室にどんどん溜まっていきます。