下水道整備と衛生状態02
前回の続きのような話を。
私が所属しているのは”工学部・都市学科”といって,今年初めて卒業生が出来る新しい学科である。先週の木・金曜日に,ちょうど学科としての最初の卒論発表会が開かれたところ。いまが卒論・修論の発表会の真っ最中で,泣きそうに忙しい,というのは,まあ,他人にとってはどうでもいい話ですね。
都市学科を新設するときに,いろいろな講義科目を新設したけれども,その科目の1つに,「都市史」というものがある。都市学科というぐらいだから,都市の成立の歴史ぐらいは知っておかないとまずかろう,ということで,1年生の前期の必修科目になっている。
この講義では都市の歴史だけではなくて,そのなかで3回を使って,私は「環境史」というものを教えている。
1回目は「文明史と環境問題の関わりのような話」,
2回目は「日本の公害の歴史」,
3回目は「地域の環境問題から地球環境問題への変遷の話」
を,かいつまんで説明している。
と言っても,文明史や環境史,などというものは私の専門ではないから,講義の準備は大変で,1年目はとにかく関連しそうな本を探し回って勉強した。いわゆる環境問題の変遷だけでなくて,たとえば「伝染病の歴史」や「砂糖の歴史」などと言った本も読んでみたが,いずれもすこぶる面白かった。その後も,関係がありそうな本は出来るだけ目を通すようにしている。新書などで読みやすいものが多いので,興味があれば,是非どうぞ。
ところで,関連資料を集めている中で,ある方からいただいた資料が次のグラフ。明治・大正時代の日本のコレラ患者数の推移と,上下水道,ごみ処理の法律が出来た年代を示したもの。
自分が原典に当たって見つけた資料ではないので,著作権がすこし心配だけれども,内務省の資料ということで,許されるでしょう(認識が甘ければ,ご指摘下さい。)
この資料を見て驚いたのだが,明治10年代には,日本でコレラで1年間に10万人以上も亡くなっている年が2回もあるんですね。5万人ほどがコレラに掛 かって3万人以上が亡くなっている年も3回もある。死亡率も非常に高くて,コレラではなくて,「コロリ」などと呼ばれていたというのも納得できます。
政府は,富国強兵の為には国民に死んでもらってはこまるし,コレラが流行るような国は先進国の仲間入りが出来ない,と必至になって衛生状態の改善に努めようとして,上下水道とごみ処理に力を入れ始める。
これが図中にある「水道条例」と「汚物掃除法」「下水道法」の制定に繋がります。汚物掃除法は,今の廃棄物の処理の基本となる法律「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(通称は廃掃法,廃棄物処理法)」の前身です。
いろいろ読んだ本の中には,必ずしも,これらの法律が出来たことでこれらの患者数が減ったわけでもない,という記述もありましたが,政府がコレラに手を焼いて環境衛生整備に力を入れた様子がよく分かるグラフで,授業でもよく使っています。
下水道整備と衛生状態
先日,紙が流せないトイレもたくさんあるのです,といったブログを書いたところですが,昨日,”米国の俳優マット・デイモンさんがトイレと下水道の大切さを訴えている”という記事を見掛けた。
アサヒコムだと→こちら。
ユーチューブで,トイレ・下水道の大切さを説くとともに,「トイレ不使用宣言」をして,注目を集め,「安全な水と衛生施設の普及を求めた寄付」を募っているのだそう。
いい活動ですね。当該のユーチューブの動画はまだ見つけられないけれども,ぜひ見てみたいものです。
日本でも,これらが流行って衛生状態を改善する必要性に迫られて,「下水道法」という法律を制定したなどの歴史がある。
僕はトイレのない地域を訪ねたことはまだないが,伝染病の抑制の為にも汚物の適切な処理ときれいな飲み水の確保が大切で,それらの未整備の地域が少しでも減れば良いと思う。
2006年,中国の新彊・ウイグル自治区にて。
ずいぶん,開放的なトイレでした。
各個室(?)に紙を入れるごみ箱が見えます。
京都・東寺のごみ箱
3連休に京都駅の近くへ行ってすこし時間が余ったので,ぶらぶらしていたら,東寺の五重塔が特別拝観をしているとのこと。
せっかくの機会なので拝観することに。
カメラを持たずに行ったので,またipod touchのひどい画像。
普段は入れない五重塔の中に入れるし,ボランティアのガイドの方がいて,説明してくれるのでよく分かる。
「五重塔は,お釈迦様の遺骨を祭るためのお墓のようなものなのです。ですから,本当は中から見るものではありません。」
とのこと。知らなかった。
もちろん,塔の中や仏像を写真に撮ることは禁止されているので,写真なし。
庭園の雰囲気を壊さないように配慮された,ごみ箱。
ちょっとした工夫ですが,奥ゆかしい。
茶店の横にも,いい雰囲気のごみ箱が。
お気に入りの一枚。
東寺の外堀には,こんな貼り紙も。
海外に旅行に行ったときには,世界遺産や遺跡巡りに躍起になるのに,身近な世界遺産を訪ねる機会はなかなかない。せっかく京都に住んでいるのだから,もう少し足繁くあちこち見に行っても良いのではないかなと思った。