原発事故:天然の放射性物質と人工の放射性物質

 前回は半減期のことを書いたが,マスコミに出ている専門家がほとんど触れていないことで,大きな問題だと思うことが他にもある。Web上では正しい指摘も見られるようになってきているが,自分の頭を整理するためにも書いておく。ただし,私は放射線関連の専門家ではないので,間違いがあれば,ご指摘下さい。

 

 原発由来の放射能漏れが明らかになって(数字が具体的に出てきて)から,自然界から浴びる放射線の量や,胃のX線で浴びる放射線の量と比較した解説をよく聞くようになった。論調はほとんどが「それらと比べれば大したことがないから大丈夫。」と言うスタンスである。

 

 しかし,

  1.天然の放射性物質と人工の放射性物質には違いがあること,

  2.内部被曝と外部被曝が充分に区別されていないこと,

  3.医療行為は,それを上回るメリットがあるから被爆が認められていること,

  4.一般人と労働者の基準を区別していないこと,
などが充分に伝えられていないことが気がかりである。

 

 特に1.が伝えられていないことが大きな問題だと思っている。天然の元素であれ,人工の元素であれ,出している放射線が人間に与える影響は同じなので,数値を比較することは間違いではない。しかし,それらの元素の挙動を考えると,それらは大きく違っている。

 

 簡単に言うと,自然界にもともと放射性物質が存在する元素に対しては生物はそれなりに対応策を講じているが,自然界になかった元素に対しては,生物側には対応策が無いばかりか,いい元素として積極的に取り込むことがある,ということである。

 

 例えば,ヨウ素などは,これまで自然界に「悪いヨウ素,怖いヨウ素」が無かったものだから,人間は栄養として甲状腺にため込む形で進化してきている。今になって突然,「このヨウ素は放射線を出すから取り込んではダメ!」と言われたところで,対応できないのである。反対に,天然に放射性物質が存在するカリウムなどは,植物を育てる3大栄養素になっているにも関わらず,体内に入ってきても,尿として排泄する機能を持っている。

 

 ところが原発事故によって放射線を出すヨウ素が撒かれてしまったので,安全なヨウ素を飲んで,放射線を出すヨウ素を出来るだけ取り込まないようにする(先に安全なものを食べて満腹にする感じ?)のが配付されているヨウ素剤である。なお,ヨウ素剤もむやみに飲むと体に悪影響があり,気を付けて飲む必要があるようである(薬の類は何でもそうだけれども)。


とにかく,こういう物質を体内に取り込んでしまうと体から出ていかず,非常に近い距離の,体の内側から,放射線を浴び続けることになるから,影響は非常に大きい。言ってみれば,「トロイの木馬」状態である。これが2.内部被爆と外部被爆の違いの話になる。

 

 もう一つ,人工物質を体内に蓄積してしまうと厄介なのは,生物濃縮することである。一度生物に取り込まれたら出ていかないから,食物連鎖に乗って生物が食べられているうちに,問題の物質の濃度がどんどん上がってくることになる。

 

 ヨウ素は半減期が短い(約8日)から,事故からしばらく時間を置けば大丈夫,というコメントもよく聞くが,前回も書いたように1/1000になるには80日ぐらい掛かるから,「海水中のヨウ素、1850.5倍に上昇」といった記事を見ると心配になる。特に日本人は海草からヨウ素を摂取していたから,その影響が出ないのかが気がかりだ。マスコミや政府を通じての,専門家の偏りのない客観的な評価と解説をお願いしたいと思う。

 


 こんな時期に非常に後ろめたい気がするが,学会発表のために,今日からアメリカのフィラデルフィアに来ている。今回は時間の関係で初めて名古屋から飛んだのだが,その中部国際空港のごみ箱。

 

 


 

色違いですが,日本福祉大学がスポンサーになっているんですね。

プロフィール

水谷聡

Author:水谷聡
@大阪市立大学 工学部 都市学科

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