オランダとデンマーク1

 ワールドカップでは、日本がカメルーンに勝ってくれて、急激に盛り上がってきている。オランダもデンマークも強敵だが、せっかくなので、決勝リーグへ行ってくれればと思う。

 

 とは言いながら、対戦相手がオランダ・デンマークというのは自分にとってはちょっと複雑だ。オランダには今年の3月頃に10日ほど居たことはこのブログでも紹介したが、15年ほど前にも3週間ほど滞在したことがある。デンマークには半年ほど留学していた。いずれも現地の研究者を頼って、研究所に長期で滞在した。

 

 私は、焼却灰の有効利用や、有効利用する時の環境影響を予測するための試験(ごみや焼却灰が水と接触したときに、どの程度の有害物質が溶け出てくるのかを調べる試験で、溶出試験と言う)を研究している。実はオランダとデンマークは焼却灰(正確には焼却主灰)の有効利用率が世界の中でもかなり高い2カ国なのである。1990年代前半の少し古いデータしか手元にないが、日本をはじめ、米国などでも、焼却灰はほとんど有効利用できていない中、オランダもデンマークも国内から発生する焼却主灰の90%程度を有効利用している。焼却灰有効利用のツートップである。

 

 また溶出試験に関する研究も進んでいる。特にオランダのDr. Hans van der Slootは1980年代からこの分野を先導してきた研究者で、私も学生時代から彼の論文を一生懸命読んで勉強した。学会で初めて会ったときにはサインを欲しいと思った程の研究者なのだが、偉ぶったところが全くなく、いろいろ質問すると何でも親切に教えてくれる。先日の訪問時にも家に招待してくれたり、宿の手配から空港でのピックアップまでお世話になりっぱなしであった。

 

 さて、オランダで焼却灰の有効利用が進んでいる理由は、土木資材が貴重だからである。「世界を作ったのは神様だが、オランダはオランダ人が作った。」というような笑い話を聞いたこともあるが、オランダは昔から海を埋め立てて国土を広げて来た。そのためには土木技術が進んでいることはもちろん必要だが、土木資材としての砂利や砂や土が必要で、それらの代替物質として焼却灰を利用しているのである。

 

 ただし、焼却灰を積極的に有効利用しているからこそ、その環境影響予測にも熱心で、予測するための試験法や評価手法はいろいろ開発されているし、安全な焼却灰とするために焼却処理にも厳しい条件を課している。そんなことがあり、焼却灰の有効利用に当たっての考え方やら、試験の方法やら、環境影響の予測手法やらを学びにオランダの研究所(オランダ エネルギー省研究所:ECN)を訪問し、いろいろ学んで来たのである。研究所では、ハンス先生の他にも数人のメンバーがチームになっていて、いろいろな人にお世話になった。

 

 ということでオランダには研究上の友人も多いから、明日のオランダ戦はちょっと複雑な思いを持ちながら楽しみにしている。さあ、明日の試合結果は、どうだろうか?

 


招待して頂いたHans先生の自宅で。

ごみ箱を見せて欲しいとお願いするとシンクの下からスルスルと。

スマートですね。

 

最近あらたに、容器包装プラスチックを回収するようになったとのこと。

奥(上側)が容器包装プラです。

 

 

プロフィール

水谷聡

Author:水谷聡
@大阪市立大学 工学部 都市学科

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