『循環とくらし』第7号

私が日頃活動している,廃棄物資源循環学会が
『循環とくらし』という雑誌を発行しています。

ごみ問題の解決には,市民との協働が不可欠と言うことで,
廃棄物資源循環学会には,
市民会員という会員資格があるし(年会費も少し安い),
市民編集号という雑誌を定期的に出したりもしています。

その『循環とくらし』の第7号が先日発行されて,
webでも公開されたので,ここでも少し宣伝しておきます。
→こちら。

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特集タイトルは「旅ゆかば ~自然との共生~」で,
旅行や観光とごみの話が並んでいます。

私も
観光地のジレンマ ~観光地にごみ箱は設置すべき?~
と言うタイトルで1つ書いています。

正解のない,なかなか難しいお題で,
私の単著にはなっていますが,仕上げるまでには,
編集委員や事務局の方々に,かなりアドバイスをいただきました。
素敵なイラストも入れてもらいました。感謝。

1冊500円ですが,webでもほぼ全ての記事が無料で読めます。
宜しければ,お目通しを。
もちろん,買って頂ければ,なお嬉しいですが。


『四大公害病』

 大学で都市学科という新しい学科を作った時,「都市史」という科目を新設した。
都市の成り立ちや栄枯盛衰,都市の環境問題や歴史をなぞる講義で,
計画デザイン領域,安全防災領域,環境創生領域の教員が順番に,
それぞれ,都市史,土木史,環境史,を教えている。
環境史は私が担当している。

 環境史 の持ち時間は3コマしかないので,
  1コマ目は 文明と環境問題,
  2コマ目は 日本の公害問題,
  3コマ目は 公害問題から地球環境問題へ

を駆け足で話している。
もう少しコマ数があると,いろいろと話が出来るのだけれども……。

 こんな授業をしているので,公害問題や環境問題の歴史を扱った本が目に付いたら,
できるだけ読むようにしている。




 公害問題には学生時代から関心があって,大学同期の仲間と勉強会をしたり,
講演会に出掛けたり,水俣病の裁判を傍聴しに行ったりした。
4回生の院試が終わった夏休みには,研究室の同期と2人で水俣を旅行して,
患者さんのお話を伺ったりもした。

 本でいえば,田尻宗昭の『公害摘発最前線』『四日市 死の海と闘う』や,
宇井純の著作など,むさぼるように読んだ。
残念ながら最近はそれらの多くが絶版になっているが,過去に日本で起きたこと,
環境省(庁)がどのように公害に対処してきたか(対処してこなかったか)を
知っておくことは絶対に必要だと思っているので,これらは今でも都市史の
講義で配る課題図書リストに並べている。こういう時は,古書が昔よりも
ずっと簡単に手に入る,アマゾン古書はとても有り難い。

 とは言え絶版になっていると,学生にも「過去のこと」という印象を与えそうで,
公害に関するいい本があればと思っていたのだが,去年の秋頃,本屋をふらふら
していた時に『四大公害病』を見つけた。
奥付を見ると,出版は2013年10月で,まさに出来たてほやほや。

 何か新しい情報が得られれば……と軽い気持ちで読み始めて驚いた。
公害問題については,そこそこ知っているつもりでいたのだけれど,
この本には教えられることばかりだった。
読みながら,気になるところに線を引き始めたが,あまりに線が増えすぎて,
途中から線を引くのをやめようかと思ったほどだ。


 例えば新潟水俣病は,新潟県の阿賀野川流域で起きた有機水銀中毒で,
(熊本の)水俣病の公式発見(1956年)から,8年も経った1964年に
公式発見された。症状も原因も同様の病気だから第二水俣病と言われる。

 講義の中ではこれを
「水俣病が起きて,チッソの工場排水が怪しいことは分かっていたのに,
政府は企業の論理と利益を優先して規制をしなかった。
そうこうするうちに,新潟で第二の水俣病が起きてしまった。」
と教えていた。 まあ,嘘ではない。

 けれども,本書の新潟水俣病の章には,次のような記述がある。
「歴史を紐解けば,阿賀野川の昭和電工鹿瀬工場ですでに
 一九四六年一一月にはその廃水が川を赤濁させている。
 ……
 ……
 実は,阿賀野川で起きた水俣病と,不知火海で起きた水俣病は,
 程度こそ違い,ほぼ同時進行で起きていた。……」

 熊本での事件の際に,国が,あるいはチッソが,すぐに排水規制などを
行っていれば,新潟水俣病は確かに公式発見されなかったかもしれない。
けれども,公式認定とは別に,潜在的な患者さんはきっと存在しただろう。
それに,ひょっとすると,気付かれていない水俣・新潟以外の水俣病も
起きていたのかもしれない,と思った。

 また,主に経産婦が苦しんだイタイイタイ病の原因究明や救済に
長い時間が掛かったことについて,
「これが働き手であればもっとはやく問題視されていたんだろうと思います。
 男尊女卑の時代で,被害にあったのが女性だったから,救済が遅くなったと
 言えるかもしれない。」
という,対策協議会長の言葉は,恥ずかしながら聞いたことがなかった。

 こんな,僕にとっては,目から鱗の記述があちこちにあった。


 それから最後にもう一つ,「あとがき」が素晴らしい。

「つきつめて言えば,公害の歴史とは,すなわち公害問題を解決に導こうとする
 人々がつくった歴史である。」
に始まる最後のパラグラフ,筆者が公害の歴史を次々と,いろいろな視点から
定義する部分は,何度読んでも震えが来る。
8ページだけだから,忙しい人にも,ぜひ読んで欲しい。


 実は「環境史」の講義は,来年度から1コマ増やせることになっている。
最近の,持続可能性社会の話などをしようかと思っていたのだけれども,
公害問題の話も,もっと膨らませたくなった。


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-----
『四大公害病- 水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病、四日市公害 』
 政野淳子
 中公新書 ISBN-10: 4121022378
 お勧め度:◎



大学の講義と読書

 大学の教員は,ほとんどの場合は研究者で,その専門分野は狭い。

 研究者は,自分の取り組んでいる研究テーマは面白いと思っているし,
特に工学系の研究者は,それが社会に役立つと思って研究しているから,
ついつい自分の専門に近いことを教えようとしてしまう。

 でも大学の学科での教育は,研究者を養成するためのものではなく,
社会に出た時に役にたつような知識を広く正しく教えないといけないから
学生に教えるべき内容と,教員が簡単に教えられる内容・教えたい内容が
違っているというようなことが,けっこう起こる。

 そんな時,自分の話しやすいこと,喋りたいことだけを伝えるような
授業をやってしまうのは最悪で,学生にとっては,まあ裏切りである。
しかも学生の側には,講義を選ぶ余地がないことが多いから不幸だ。


 とは言いながら,専門外のことを教えるのは教員にとってもしんどい。
自分の専門以外の講義の準備は慣れていないから,いつも以上に時間が掛かる。
なにより,よく分からないことがあったりもするし,知識には穴もあるし,
その結果,不安を抱えながら教壇に立つことになる。

 学生からすれば,大学の教員はその道の専門家だと思っているだろうし,
こちらが不安そうな表情をして授業をしていても,お互いにとって不幸な
だけだから,とにかく自信のなさをできるだけ顔には出さないようにして,
偉そうな顔(と言うと語弊があるけれども)をして話をしているのだが,
自信のない授業をした後は,やっぱり後味が悪い。

 結局,それらの不安を打ち消すためには,いろいろ調べて知識を増やし,
自分自身の考えをしっかり持って,自信を持つしかないのである。
そんな思いもあって,日頃から出来るだけアンテナを張るようにしている。


 特に自分は本が好きだし通勤時間も長いので,目に付いた本はできるだけ
読むようにしている。最近は頼んでもいないのに,似たような本を,次々と
アマゾンが知らせてくれるし……。
いい本を見つけたら,学生への推薦図書にできるというメリットもある。


 というわけで,自分の読んだ本について,備忘録も兼ねて,書評というか,
感想文のような本の紹介を,時々は,このブログに書くことにします。

 という決意表明だけで長くなったので,今日は書評はなしです。

223-都市史の本
都市史を教えるために探して勉強した本です。いまも増殖中。

プロフィール

水谷聡

Author:水谷聡
@大阪市立大学 工学部 都市学科

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